競馬場レースイメージ
競馬場イメージ
出走馬の様子
馬の横顔イメージ

story 未来に語り継ぎたい名馬物語

    調教中でもレースの前後でも
    周囲の"注目"を浴びていた

    勝つときの鮮やかさ、芦毛という毛色、長い競走生活、気性の激しさなどもあり、多くのファンに愛された©K.Yamamoto

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     2011年の夏、函館開催で彼はデビューした。栗東の須貝尚介厩舎に所属して、今浪隆利厩務員が担当した。新馬戦、コスモス賞を連勝後は、札幌2歳ステークス、ラジオNIKKEI杯2歳ステークスで共に2着に入り、2歳時の戦績は4戦2勝だった。

     のちに問題視される気性の荒さは、サンデーサイレンス系の特徴であり、父ステイゴールド譲りと思うしかない。函館に滞在中から早くも、他の馬を蹴りに行くことで有名だったという。
    「3歳の春までは僕が乗って厩舎まわりで運動できたけど、今(4歳春時点)はとてもできません。曳き運動中も神経質で、他の馬を警戒しながら歩いてます」

     今浪さんがそんな述懐を残している。

     その後もヤンチャな気性は変わらず、調教中であろうとレースの前後であろうと、今浪さんを弄ぶかのように立ち上がったり引きずったりして、周囲の注目を浴びた。その気性について当の主人公は、「繊細さと生命力の現れ。ま、そう思といてや」とごく短く言い訳した。

     別にこんなエピソードもある。

     須貝調教師は普段から、馬とのふれあいを大切にする人だ。厩舎にあってもレース直後でも、じゃれ合うように馬の鼻面を撫でる場面をしばしば見かける。

     そうした時、ゴールドシップは調教師に何度も噛みついた。その肩に痣を作ったり、シャツを破いたりしたという。
    「須貝厩舎では、実に情の厚い人たちに恵まれた気がするなァ。センセには時に優しく時に厳しく指導してもろたし、今浪さんにはホンマよう面倒見てもろたで。

     ご存知のとおり、引退してからはビッグレッドファームにいてるんやけども、初めて迎えた種牡馬展示会の朝、センセはわざわざ牧場まで駆けつけて、立派な挨拶をしてくれはった。今浪さんは今浪さんで、北海道開催のたびに放牧地を訪ねてきてくれはる。今でも関係が続いてるのはホンマありがたい。

     須貝センセはな、騎手の頃からオーナーに可愛がってもろてたんやで。現役時代の母ちゃんにも乗ってて、その流れでオレも須貝厩舎で面倒見てもらうことになったんや。あれは開業4年目やったか、初めての重賞制覇がオレの共同通信杯やったし、初めてのGⅠ制覇もオレの皐月賞やった。縁があるんかもなァ。有名な話やけども、皐月賞の返し馬を始めた時に、『この舞台によくぞ』って、センセの目には感激の涙があふれたそうなんや。勝って引き上げて来た時にはもう満面の笑みを浮かべてはったから、オレもあとになって聞いた話やけどな」

     2012年の皐月賞を忘れられぬファンは、今もきっと多いはずだ。

     馬場が荒れたところに、前日からまた雨が降った。多くの馬が外目の進路を選ぶ中にあって、4コーナーでポッカリ空いた内を突いたのがゴールドシップだった。鞍上には内田博幸騎手がいた。

     向正面ではなにせ最後方を走っていたのだ。だが、レースが決着した時、並み居る強豪を2馬身半も突き放していた。いくら内を突いたとはいえそれは、桁外れの脚力なくしてはできない芸当だった。続くダービーでは5着に敗れたものの、その後も菊花賞、有馬記念を連勝して、持てる実力を存分に証明してみせた。この3歳時、実に6戦5勝。年度代表馬こそジェンティルドンナ(同年GⅠ4勝)に譲ったものの、黄金の輝きをまさしく放つことができた。
    「現役時代には合計で7人のジョッキーに乗ってもろた。そのうちの12回、手綱を一番多く取ってもろたのがウチパクさんやったな。あの皐月賞のあと、『馬を信じてた』と言うてくれはったのには、オレ自身すっごく感激したで。ダッシュの利かんタイプなもんやから、捲りがうまくはまるように、何度もベストのタイミングでゴーサインを出してもろたし、春の天皇賞を勝てた時には、ノリさん(横山典弘騎手)が二段ロケット方式でのスパートを指示してくれた。皆さん、ホンマによう考えてくれてはったわ。もう一人、阪神大賞典を一緒に連覇した岩田(康誠)騎手を加えた3人が、引退式でオレの横に並んでくれたやろ。嬉しかったなァ。サラブレッド冥利に尽きるっちゅうもんやで」

     現役中、試行錯誤はあったものの、レースにおける彼の指定席は、ほぼいつも最後方だった。そこから先頭へと躍り出る捲りや追い込みは圧巻だったが、「なぜあんなレースしかできないの?」と不思議に思うファンも、実際には多かった。
    「おっ、いよいよ核心に迫ってきたか」

     ここでゴールドシップは不敵に笑った。

    6歳時に"3度目の正直”で天皇賞(春)に勝利した©K.Yamamoto

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