優駿9月号 No.969
2024.08.23発売
未来に語り継ぎたい
名馬BEST100 結果発表!
第81位タイ 1020P 前回46位(35位DOWN)
影をも踏ませぬダービーの逃げ
カブラヤオー
1972年6月13日生 牡 黒鹿毛
凄みは驚異的な粘りにあり
皐月賞は1000㍍通過58秒9。対してレコードだった今年の皐月賞が同57秒5。決着時計2分2秒5が相当速かった時代に今年とわずか1秒4差はいかに速かったか。さらにダービーでは同58秒6と皐月賞よりも速いラップを刻み、後続に影を踏ませなかった。その凄みは前半から飛ばす強引に映る逃げだけではなく、ゴールまで先頭を譲らない後半の驚異的な粘りにある。卓越した心肺機能をもつ日本競馬史屈指の存在だ。
第81位タイ 1020P 前回185位タイ(104位UP)
負けても走り続ける強さ
ハルウララ
1996年2月27日生 牝 鹿毛
高知競馬場に1万人超を集める
通算113戦未勝利。たとえ勝てなくても走り続けるハルウララが話題になったのは2003年のこと。マスコミで報じられ、単勝馬券が当たらないからと交通事故のお守りになるなどブームを巻き起こした。106戦目に騎乗したのは前年12度目のJRAリーディングジョッキーに就いた武豊騎手。高知競馬場に1万人以上が詰めかけ、大いに盛り上がった。勝利こそつかめなかったが、その存在は間違いなくファンの記億に残る。
第83位 983P 前回82位タイ(1位DOWN)
ジャパンプライド
カツラギエース
1980年4月24日生 牡 黒鹿毛
変幻自在に強敵を封じ込む
第4回ジャパンCはシンボリルドルフ、ミスターシービーと2頭の三冠馬が出走し、過去3戦全敗の外国馬にひと泡吹かせてほしいという願いが強かった。だが、その扉をこじ開けたのは直前の天皇賞(秋)で5着だったカツラギエース。10番人気と人気薄であることを逆手にとり、ノーマークの大逃げながらゆったりした絶妙なペースを作り出し、追いすがる人気馬を完封。三冠馬も海外の強豪もものの見事に惑わせた。
第84位 971P 前回68位(16位DOWN)
平成の幕開けを彩ったステイヤー
スーパークリーク
1985年5月27日生 牡 鹿毛
武豊騎手と共に新時代を開く
昭和最後のクラシック。1988年菊花賞で18番目の出走枠に滑り込むと、内から突き抜け、5馬身差圧勝。武豊騎手は史上最年少クラシック制覇を成し遂げた。そして時代は平成へ。オグリキャップ、イナリワンと「平成三強」を担う。天皇賞(秋)でオグリキャップを、天皇賞(春)でイナリワンを破り、互角に渡り合った。父ノーアテンション譲りのスタミナと若き天才の手綱さばきが新時代の到来を告げた。
第85位 967P 前回81位(4位DOWN)
その逃げは自由自在
セイウンスカイ
1995年4月26日生 牡 芦毛
好敵手を翻弄した菊花賞
1998年牡馬クラシックはスペシャルウィーク、キングヘイローとの三強対決。皐月賞を制し、スペシャルウィークがダービーを獲って迎えた菊花賞。果敢に先手を奪い、前半は1ハロン11秒台で後ろを引き離し、中盤はペースを落とし、息を整える。そして勝負所の下り坂で早々にペースを上げ、後続に決定的な差をつけ、二冠制覇を成し遂げた。母系のミルジョージ、モガミから受け継ぐ豊富なスタミナで晩秋の淀を席巻した。
第86位 934P 前回56位(30位DOWN)
孤高の女王
クリフジ
1940年3月12日生 牝 栗毛
圧倒的な戦績は時代を超える
生涯成績11戦11勝。のちに尾形藤吉調教師から天才と称された若き前田長吉騎手とともに戦時下を駆け抜けた名牝。3戦目で挑んだ東京優駿競走(日本ダービー)ではスタートで遅れるも、じっと後方待機。進路がクリアになった直線半ばから強烈な末脚で抜け出し、6馬身差をつけ、圧倒した。京都農商省賞典4歳呼馬(菊花賞)大差勝ちなど土つかずのまま引退。最多全勝記録は80年以上経った今も、まだ破られていない。
第87位 920P 前回71位(16位DOWN)
マイル女王の座は譲らない
ノースフライト
1990年4月12日生 牝 鹿毛
引退レースで示した矜持
生涯で2着以下だったのは2000㍍の3戦目だけ。1600㍍5戦5勝のパーフェクトマイラー。1994年安田記念を制し、春秋マイルGⅠ制覇を目指したマイルCSは引退レースでもあった。ライバルは1400㍍のスワンSで敗れたサクラバクシンオー。道中、相手はただ1頭とその背後につけ、直線で競り合い、残り200㍍で先頭に立ち、押し切った。1600㍍なら絶対に負けない。そんなプライドをぶつけ、花道を飾った。
第88位 904P 前回93位(5位UP)
我が道を行く逃げ
メジロパーマー
1987年3月21日生 牡 鹿毛
テレビカメラが見失った有馬記念
同期はメジロマックイーンとメジロライアン。いわゆる「メジロ87年組」でもっとも後れをとっていたが、1992年宝塚記念を勝ち、GⅠホースの仲間入りを果たす。しかし、秋2戦で大敗し、有馬記念は15番人気まで人気を落とした。レース中盤からダイタクヘリオスと激しい先頭争いを演じ、テレビカメラが見失うほど大きく後ろを引き離し、そのリードをゴール板まで守ってみせた。人気薄をあざ笑う強烈な逃走劇だった。
第89位 871P 前回130位タイ(41位UP)
テイエムオペラオーの好敵手
メイショウドトウ
1996年3月25日生 牡 鹿毛
6度目の正直で一矢報いる
永遠の好敵手テイエムオペラオーとの初対決は2000年宝塚記念。そこからGⅠ5戦連続2着とライバルの後塵を拝し続けて1年。勝つ方法を模索し続けた陣営は宝塚記念で大きな賭けに出る。それが4コーナー先頭という積極策。好位から後ろを待たずに直線入口で果敢に先頭へ。併せ馬に強いテイエムオペラオーの得意の形に持ち込ませなかった。GⅠ勝利へのあくなき探求心と執念によってついにライバルに一矢報いた。
第90位 867P 前回84位(6位DOWN)
史上初の牝馬三冠馬
メジロラモーヌ
1983年4月9日生 牝 青鹿毛
三冠目は半馬身差の粘り勝ち
JRA史上初の牝馬三冠をかけたエリザベス女王杯の単勝オッズは1.3倍。最終戦も単枠指定を受け、負けられない状況に置かれた。ゆるやかな流れのなか、絶好位をとり、4コーナー出口で先頭へ。強気な姿勢で三冠ロードをひた走る。最後はスーパーショットに迫られ、着差は半馬身。3戦通じて最小着差だったことがかえって牝馬三冠の価値を強調する。獲得賞金3億円突破は当時、牝馬の最高賞金額でもあった。
第91位 865P 前回50位(41位DOWN)
悲運の"超特急"
キーストン
1962年3月15日生 牡 鹿毛
人馬の絆は想像を超える
山本正司騎手とダービーを逃げ切ってから約2年半。中距離を主戦場に活躍したキーストンは関東遠征を避け、有馬記念ではなく、当時、12月に行われた阪神大賞典に駒を進める。いつものようにスピードの違いを見せつけ、抜群の手応えで最後の直線を迎えた次の瞬間、故障を発生。人馬ともターフに叩きつけられる。左前脚を脱臼しながらも動けない山本の元へ戻り、そっと気遣う光景は想像を超えた絆の深さを今も伝える。
第92位タイ 832P 前回90位(2位DOWN)
ダービー制覇への切符
ウイニングチケット
1990年3月21日生 牡 黒鹿毛
"マサト"と成し遂げた大願
弥生賞では皐月賞レコードを上回る記録で勝利し、皐月賞1番人気も4着。それでも、柴田政人騎手の自信は決して揺るがなかった。騎手生活27年目の44歳。ダービーは18回騎乗し、未勝利。心からダービーを渇望していた名手は終始、内ラチ沿いを進み、勝負の瞬間に備える。直線で真っ先に先頭へ。ビワハヤヒデ、ナリタタイシンにその座を譲ることはなかった。人馬の魂が共鳴した大願成就の瞬間に競馬場が震えた。
第92位タイ 832P 前回67位(25位DOWN)
規格外の戦士
エピファネイア
2010年2月11日生 牡 鹿毛
ジャパンCで圧倒的なパフォーマンス
今年上半期はGⅠ4勝と種牡馬として大一番での強さを見せつけ、飛躍を遂げた。産駒の勝負強さの源泉となったレースが2014年ジャパンCだ。ジェンティルドンナ、ハープスター、ジャスタウェイと豪華メンバーがそろうなか、好位で流れに乗り、ラスト400㍍で先頭に躍り出ると、独走に持ち込み、当時ワールドベストレースホースランキング1位ジャスタウェイに4馬身差圧勝。とてつもない破壊力で世界を驚かせた。
第94位 827P 前回74位(20位DOWN)
競馬史を変えたダービー勝利
アイネスフウジン
1987年4月10日生 牡 黒鹿毛
沸き起こった「ナカノコール」
1990年ダービーは19万人を超える入場人員を記録。競馬ブームを象徴する熱狂のなか迎えた。皐月賞は先手を奪えず、2着。雪辱を期すダービーでは自慢のスピードを発揮し、後続を離す展開に。好位勢を振り切り、外を伸びるメジロライアンの猛追もしのぎきった。最後まで力を尽くした驚異的な粘り腰とベテラン中野栄治騎手の歓喜のガッツポーズに送られた19万人の「ナカノコール」は伝説として永遠に語りつがれる。
第95位 819P NEW
受け継がれたタフさ
ラッキーライラック
2015年4月3日生 牝 栗毛
同期のダービー馬に勝利
デビューから4連勝で臨んだ桜花賞は断然人気に推されながら2着。その後、勝てない時期が1年7カ月に及んだ。長いトンネルを抜けたエリザベス女王杯は翌年も勝利し、連覇達成。その間、大阪杯では同世代のブラストワンピース、ワグネリアンを破り、デビュー当初の高いポテンシャルを改めて証明した。若駒から古馬まで長きにわたり一線級と戦い続けるタフさは父オルフェーヴル、父の父ステイゴールドを彷彿とさせた。
第96位 805P NEW
4歳から"無双モード"に突入
モーリス
2011年3月2日生 牡 鹿毛
マイルと中距離でGⅠ6勝
3歳春は重賞で結果を残せず長期休養へ。その間、堀宣行厩舎への転厩が状況を一変させた。条件戦から7連勝。春秋マイルGⅠ制覇を含め、国内外で1年3カ月以上にわたり無敗というまさに無双モードに突入した。その後も天皇賞(秋)、香港Cと中距離GⅠを連勝し、グラスワンダー、スクリーンヒーローから受け継いだ底力をみせた。遅咲きの血はジャックドールら産駒にも伝わっており、この先も枝葉を広げるだろう。
第97位 799P 前回69位(28位DOWN)
闇を切り裂く瞬発力
ダンスインザダーク
1993年6月5日生 牡 鹿毛
菊花賞で見せた極限の末脚
皐月賞を熱発で回避したものの、プリンシパルSから、ダービーへ。武豊騎手の初制覇が期待されるも、クビ差2着。背水の陣で挑んだ菊花賞では、これまでの好位から抜け出す競馬を捨て、あえて溜める形を選択。2周目4コーナーでは12番手まで下げ、上がり600㍍33秒8という極限に近い瞬発力で闇を切り裂くかのように駆け抜けた。この記録はのちにディープインパクトに破られるまで菊花賞馬歴代1位でもあった。
第98位 796P 前回73位(25位DOWN)
底知れぬ力を秘めたまま
フジキセキ
1992年4月15日生 牡 青鹿毛
惜しまれる故障での引退
日本競馬に革命をもたらしたサンデーサイレンス初年度産駒にして最高傑作の一頭。故障のため、4戦4勝で引退した。圧倒的なパフォーマンスを発揮した4戦の2着馬にはダービー馬タヤスツヨシを筆頭にスキーキャプテン、ホッカイルソーと錚々たる馬たちが並び、幻の三冠馬という当時の評価は決して過言ではなかった。また、種牡馬として芝ダートを問わず、多彩な活躍馬を輩出しており、未完の軌跡への想像が膨らむ。
第99位 784P NEW
シン・東京マイル王
ソングライン
2018年3月4日生 牝 青鹿毛
持続力と瞬発力で魅了
東京芝1600㍍はスピードと持続力のバランスが試される。どちらかに傾いても決して勝てない。それゆえに安田記念連覇は少なく、本馬を含め、スウヰイスー、ヤマニンゼファー、ウオッカと4頭しかいない。連覇を決めた2023年は前年秋に調子を崩す難しい状況ながら、サウジ遠征からヴィクトリアマイル優勝とつなげ、東京マイルGⅠを連勝した。これもウオッカ以来2頭目の快挙であり、持続力と瞬発力で魅了した。
第100位 758P 前回64位(36位DOWN)
名門・メジロ血脈の結晶
メジロドーベル
1994年5月6日生 牝 鹿毛
円熟の競馬で4年連続GⅠ制覇
ひとつ年上のエアグルーヴには勝負所で並んでも、先行しても勝てず、3回連続で先着を許していた。そんな状況を1998年のエリザベス女王杯で打破すると翌年は一転して追われる立場へ。相手はGⅠ2勝の年下ファレノプシス。1年間未勝利に終わった近況から世代交代の声もあったが、終始インを攻める円熟味あふれる競馬で最後までその座を譲ることはなかった。名門メジロの誇りが秋の淀を二度にわたり彩った。
2024.08.23発売
未来に語り継ぎたい
名馬BEST100 結果発表!