story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 55
二度頂点を極めたダート王者
不屈のカネヒキリ
2020年8月号掲載
壮絶な戦いの果てに
残した記録と記憶
その後、カネヒキリはまたも試練に見舞われる。
続くフェブラリーSは3着だったが、レコード決着のサクセスブロッケン、カジノドライヴにクビ+アタマ差という接戦だった。
そして5月、雨の船橋・かしわ記念。このときは直線で先頭に立ったエスポワールシチーをゴール前で追い詰めたものの3/4馬身届かず2着。しかしゴール入線後、鞍上の内田博幸騎手が下馬。カネヒキリは厩務員に引かれて戻ってきた。その後の検査で左第3指骨骨折が判明した。
またも1年以上のブランクを経て、8歳になった帝王賞で復帰。フリオーソの2着に敗れたが、骨折休養明けとしては上々の結果。中2週足らずで出走した盛岡・マーキュリーCでは、格下相手とはいえ、楽々と2着に5馬身差をつける圧勝。2度目の完全復活を思わせた。
しかし続く門別・ブリーダーズゴールドCでは、直線で前を行く4頭をとらえて先頭に立ちかけたところ、シルクメビウスに並ぶまもなく交わされ4馬身もの差をつけられ2着。にわかには信じ難い光景だった。
その後、秋に向けて調整される過程で、以前とは逆の左前脚に屈腱炎を発症。右前脚も以前手術したのとは違う場所を痛めており、ついに引退。凄絶な現役生活だった。
GI勝利は国内タイ記録の7勝まで。のちにその記録を同期のヴァーミリアンが9勝にまで伸ばすことになるが、ヴァーミリアンとは5度の対戦で一度も先着を許さなかった。
種牡馬となったカネヒキリは6シーズンで472頭の産駒を残し、その多くがダートで活躍。19年にはミツバが川崎記念で父仔制覇を果たし、種牡馬カネヒキリに初めてGIタイトルをもたらした。しかしカネヒキリは16年5月に種付け中の事故で死亡しており、ミツバの親孝行はその後のことだった。
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カネヒキリ KANE HEKILI
2002年2月26日生 牡 栗毛
- 父
- フジキセキ
- 母
- ライフアウトゼア(父Deputy Minister)
- 馬主
- 金子真人氏→金子真人ホールディングス㈱
- 調教師
- 角居勝彦(栗東)
- 生産牧場
- ノーザンファーム
- 通算成績
- 23戦12勝(うち地方9戦5勝、海外1戦0勝)
- 総収得賞金
- 8億5161万6700円(うち地方3億4000万円、海外3532万5700円)
- 主な勝ち鞍
- 09川崎記念(JpnI)/08・05ジャパンCダート(GI)/08東京大賞典(JpnI)/06フェブラリーS(GI)/ 05ダービーグランプリ(GI)/05ジャパンダートダービー(GI)/10マーキュリーC(JpnⅢ)/05ユニコーンS(GⅢ)
- 表彰歴等
- 08NARグランプリダートグレード競走特別賞馬/05NARグランプリダートグレード競走最優秀馬
- JRA賞受賞歴
- 08・05JRA賞最優秀ダートホース
2020年8月号