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story 未来に語り継ぎたい名馬物語

    春のクラシックを席捲する
    2頭の、たった一度の対決

    1975年東京4歳S●優勝:デビュー2戦目から3連勝で挑んだ。後の牝馬二冠馬テスコガビーに菅原騎手が騎乗したため、弟弟子の菅野澄男騎手を背に優勝©JRA

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     デビューは2歳11月、東京の新馬戦だった。乗るのは菅原の弟弟子で、2年めの菅野澄男。スタートで出遅れて、追い込んできて2着になった。2戦めはスタートも普通で、3馬身差で楽勝すると、つづく中山のひいらぎ賞も6馬身差で勝った。「不細工な馬」は、ここまでの3戦は7、5、8番人気だった。

     75年。3歳初戦のジュニアカップでは菅原に乗り替わり、2着に10馬身の差をつけて逃げきっている。3連勝でクラシック候補となったカブラヤオーは東京4歳ステークス(現共同通信杯)に駒を進めた。ところがここに、4戦無敗の牝馬テスコガビー(仲住芳雄厩舎)もエントリーする。この馬の主戦も菅原だった。

     菅原はこのときデビュー12年めの28歳、大レースには縁のない地味な中堅騎手だった。本人に言わせれば、福島や新潟の「ローカル専門」である。その菅原に突如、牡と牝、2頭のクラシック有力馬がめぐってきたのだ。ここでテスコガビーを手放せば二度と乗れなくなるかもしれない。むずかしい選択を迫られた菅原に助け船をだしたのは茂木だった。

    「自分の厩舎の馬はいつでも乗れるが、テスコガビーのような馬に乗るチャンスは滅多にないんだから、乗せてもらったらどうだ」

     師匠のアドバイスで菅原はテスコガビーに乗り、カブラヤオーの背には菅野が戻った。

     75年春のクラシックを席捲する2頭の、たった一度の対決はテスコガビーの逃げではじまった。向こう正面で加速がついたカブラヤオーが外から追い抜いていく。二番手に控えたテスコガビーは3コーナー過ぎから外をとおって先頭をうかがう。カブラヤオーの性格を知っている菅原は馬体を並べずに、すこし間隔を置いて走らせていた。

     アクシデントは直線でおきた。3番人気のイシノマサルが内からカブラヤオーに並びかけようとすると、驚いたカブラヤオーは急に外に斜行する。ちょうどそこにテスコガビーがいて、壁のようになってくれた。態勢を立て直したカブラヤオーはかろうじて首差でテスコガビーに勝ったが、どたばたしたゴール前で、間隙を突いたテキサスシチーがテスコガビーに鼻差まで迫っていた。

    1975年弥生賞●優勝:再び菅原騎手に手綱が戻り、関西の期待馬ロングホークを寄せ付けず連勝を伸ばし、皐月賞に向かった©JRA

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