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story 未来に語り継ぎたい名馬物語

    GⅠ制覇への強敵と思われた
    強力外国馬とのあっけない決着

    1994年 京都牝馬特別 ● 優勝 2000メートルの阪神牝馬特別を勝利した後、4歳初戦はマイル戦。57㌔の斤量を背負いながら、6馬身差の圧勝劇©F.Nakao

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    1994年 マイラーズカップ ● 優勝 近走の充実ぶりが評価され、単勝1番人気。GⅠ馬や、のちにGⅠを制する強豪を相手に重賞3連勝を飾る©H.Watanabe

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     その年、最後にノースフライトが選んだのは12月の阪神牝馬特別だった。鞍上に再び武豊騎手を迎え1番人気に推されたノースフライトは、2番手から4コーナーで先頭に並びかけ、ベストダンシングを突き放して1馬身2分の1差で快勝する。

     明けて94年、4歳になったノースフライトの緒戦は京都牝馬特別。ここも57㌔を背負いながら1・4倍の圧倒的人気に応え、フェイヴァーワン以下に6馬身の差をつけて圧勝した。ここまで重賞はすべて牝馬限定戦であったが、マイル戦での強さは安定しており、陣営は次走にマイラーズカップを選ぶ。

     この年、京都競馬場改修に伴い阪神開催の一部が中京に振り替えられたため、マイラーズカップは中京の芝1700㍍で行われた。頭数こそ多くはなかったが、この年の秋に天皇賞を勝つネーハイシーザーとジャパンカップを勝つマーベラスクラウンが出走。しかしノースフライトは単勝1・8倍の大本命に推される。そしてまた人気に応えた。3番手につけ4コーナーで前を行くネーハイシーザーに並びかけると、残り200㍍で先頭に立ち追い込んできたマーベラスクラウンをクビ差しのいでゴールイン。1分40秒6はレコードタイムだった。「次は大きいところを狙いたい」と加藤敬二調教師が述べた通り、もはや国内に敵はおらず、安田記念でもこの馬が本命に推されるだろうと誰もが予想していた。

     ところがこの年から国際競走になった京王杯スプリングカップに本番のステップレースとして5頭の外国馬が参戦し、1~4着を独占するという大事件が起こったのだった。しかも勝ったフランスの名マイラー・スキーパラダイス(ブリーダーズカップマイル2着馬)にはノースフライトの主戦武豊騎手が乗るという皮肉なめぐりあわせ。この結果に衝撃を受けたファンは、ノースフライトの強さを忘れてしまったかのようだった。

     5月15日、安田記念には外国馬5頭を含む16頭の強者が集結し、かつてない華やかさが競馬場にあふれていた。1番人気はスキーパラダイス。2番人気にはイギリスのサイエダティ(英1000ギニー、ジャックルマロワ賞勝ち)、3番人気にはダービー卿チャレンジトロフィーを勝ってきた日本の最強スプリンター・サクラバクシンオー、4番人気にフランスのドルフィンストリート(フォレ賞勝ち)、そして角田晃一騎手に再び任されたノースフライトは単勝7倍の5番人気に甘んじていた。

     マザートウショウを抑えてマイネルヨースがハナに立ちレースを引っ張った。有力馬は好位に一団となり、ノースフライトはいつもと違って後方から3番手と行き脚がつかない。超ハイペースが続く。4コーナーでサクラバクシンオーが動き、直線に入ると先頭に立った。各馬死力を尽くして追い出す。そのとき後方から大外を飛んできた馬がいた。ノースフライトだった。次元の違う末脚で後続を突き放す。粘るサクラバクシンオーにドルフィンストリート、スキーパラダイスが食い下がり、ようやくエンジンのかかった上り馬トーワダーリンもやってきたが、大勢は決していた。2着のトーワダーリンに2馬身2分の1の差をつけ、ノースフライトは初のGⅠタイトルを手にした。あまりにも強かった。それを目の前で見せつけられて、欧州馬の肩書きに目がくらんだファンは自らを恥じた。

     この勝利で石倉幹子厩務員はJRA史上初のGⅠ制覇を成し遂げた女性厩務員となった。ノースフライトはマイナス10㌔の470㌔で出走。マイラーズカップから間隔は空いていたが、ここを目標に加藤敬二調教師も「やれることはすべてやったという心境」だったと結果を喜び、角田晃一騎手のレースを読み切った騎乗も光った。一方、前半4ハロン45・0秒という史上最速のハイラップを初めて経験した欧州馬には苦い結果となった。

    1994年 安田記念 ● 優勝 武豊騎手が外国馬スキーパラダイスに騎乗したため、角田騎手とのコンビ復活。直線半ばで先頭に立ってGⅠ初制覇©H.Imai/JRA

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