story 未来に語り継ぎたい名馬物語
未来に語り継ぎたい名馬物語 59
レコード駆けの弾丸シュート
サッカーボーイの底知れぬ魅力
2021年1月号掲載
もしアクシデントがなければと
思わせた有馬記念
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サッカーボーイの陣営は、当初、秋の目標として菊花賞を考えていた。もし、これが実現していたらいったいどんなレースが見られたのかと、いま考えても残念でしかたないのだが、またしても脚部不安が発生して回避することになり、マイルCSが復帰戦となった。
この条件でのサッカーボーイはもはや別格で、ここでも最後の200㍍だけで後続を4馬身斬って捨てる。
そして有馬記念を迎えるのだが、ここでのサッカーボーイには、ふたつの点で耳目が集まっていた。ひとつは2500㍍という距離である。
マイルから2000での強さについて、もはや疑問を差し挟む余地はない。が、2500ではどうなのか。長いといわれているが、本当にそうなのだろうか、というものだ。
そしてもうひとつは、同世代のスター、オグリキャップとの初対決である。果たして、どちらが強いのか。
もっともオグリキャップにはタマモクロスとの「芦毛対決」もかかっていて、世間の注目はそちらに向きがちではあったのだが、レースではサッカーボーイも芦毛2頭に続く3番人気に支持されていた。
しかし、ここでアクシデントが起きる。サッカーボーイがゲート内で暴れ、鉄枠に顔を強くぶつけて歯を折り、鼻血を出してしまったのだ。
これが走りに影響しなかったと考えるのは難しいだろう。
出遅れたサッカーボーイは、終始最後方の位置どりを強いられる。最終4コーナーでも最後方に置かれたままだったが、そこからよく脚を伸ばして3着まであがってきた(3位入線のスーパークリークが失格のため繰り上がり)。
スタートのアクシデントがなければ、と考えても詮ないことを考えずにはいられないレースだった。
結果的に、この有馬記念がサッカーボーイ最後のレースになったのだが、この馬の能力の「底」は、いったいどこにあったのか。
勝ったレースで見せた破壊力は、他に例を見ないほどだった。他の馬たちとの差を、着差というこれ以上わかりやすいものはない形で、見せつけた。
着差はハナでも勝ちは勝ち、大きく離して勝つ必要はないのだが、サッカーボーイはちぎって勝った。
「ちぎるつもりはないのに、ちぎれちゃう」とでも言いたげなその佇まいが、人々の記憶からこの馬が消えない理由なのかもしれない。
(文中敬称略)
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サッカーボーイ SOCCER BOY
1985年4月28日生 牡 栃栗毛
- 父
- ディクタス
- 母
- ダイナサッシュ(父ノーザンテースト)
- 馬主
- (有)社台レースホース
- 調教師
- 小野幸治(栗東)
- 生産牧場
- 社台ファーム
- 通算成績
- 11戦6勝
- 総収得賞金
- 2億1993万2000円
- 主な勝ち鞍
- 88マイルチャンピオンシップ(GI)/87阪神3歳S(GI)/88函館記念(GⅢ)/88中日スポーツ賞4歳S(GⅢ)
- JRA賞受賞歴
- 87JRA賞最優秀2歳牡馬/88JRA賞最優秀スプリンター
2021年1月号