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story 未来に語り継ぎたい名馬物語

    新旧女王対決で果たした
    牝馬三冠馬“初”の記録

    2011年 ヴィクトリアマイル ● 優勝 1歳年上の女王ブエナビスタと初対決。早めの競馬で先輩を完封し、5つ目のビッグタイトルを獲得した©Photostud

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     アパパネの最後の勝利は2011年ヴィクトリアマイルだった。1歳年上のブエナビスタとの頂上対決が実現した。東京競馬場の芝1600㍍を舞台に行われるレースは両馬にとってともに得意な条件だった。アパパネが東京競馬場で3戦無敗だったのに対し、2連覇を狙うブエナビスタは芝1600㍍で5戦5勝の成績を残していた。

     どっちが強いのか、どちらが勝つのか。ファンはブエナビスタ有利と見てオッズ1・5倍の1番人気に支持した。アパパネは4・1倍の2番人気で続いた。

     だが横綱相撲をしたのはアパパネの方だった。常にブエナビスタの前でレースをし、スパートも先だった。上がり3ハロンはブエナビスタの方が0秒3も速い34秒0だったにもかかわらず、ゴールではクビ差だけアパパネが先着した。

     この勝ち星は貴重だった。メジロラモーヌもスティルインラブも牝馬三冠に輝いた後は1勝もすることができず、引退した。アパパネの勝利は牝馬三冠馬が三冠後に挙げた史上初めての白星だった。

     筆者はこのヴィクトリアマイルがアパパネのベストレースだと思っている。そして、このレースで燃え尽きたかのようにアパパネらしさは失われ、2012年の安田記念を最後に現役を引退した。

     牝馬三冠はアパパネの後、2頭が続いた。2012年のジェンティルドンナ(父ディープインパクト、母ドナブリーニ、栗東・石坂正厩舎)と2018年のアーモンドアイ(父ロードカナロア、母フサイチパンドラ)だ。アーモンドアイはアパパネと同じ国枝調教師に育てられた。

     引退から8年近くがすぎ、現役時代のアパパネを知らない若いファンも増えたが、モクレレ、ジナンボー、ラインベックの母だと言えば親しみが湧くはずだ。東京競馬場に行けば、鹿毛のアパパネとは毛色が違う芦毛の半弟のシュガーヒル(父クロフネ)が誘導馬を務めているのを見ることができる。

     アパパネの記憶は競馬場の至る所にまだ鮮明に残っている。

    ©Y.Kunihiro

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    アパパネ APAPANE

    2007年4月20日生 牝 鹿毛

    キングカメハメハ
    ソルティビッド(父Salt Lake)
    馬主
    金子真人ホールディングス㈱
    調教師
    国枝栄(美浦)
    生産牧場
    ノーザンファーム
    通算成績
    19戦7勝(うち海外1戦0勝)
    総収得賞金
    5億5859万2000円
    主な勝ち鞍
    11ヴィクトリアマイル(GI)/10秋華賞(GI)/10オークス(GI)/10桜花賞(GI)/09阪神ジュベナイルフィリーズ(JpnI)
    JRA賞受賞歴
    09JRA賞最優秀2歳牝馬 /10JRA賞最優秀3歳牝馬

    2020年7月号

    有吉正徳 MASANORI ARIYOSHI

    1957年生まれ、福岡県出身。東京農工大学在学中の東京中日スポーツでのアルバイトを経て、82年に中日新聞入社。92年に朝日新聞に移籍する。同紙金曜日の夕刊で2003年より掲載の「有吉正徳の競馬ウィークリー」は現在も連載中。このコラムをまとめた著書「第5コーナー 競馬トリビア集」のほか、「2133日間のオグリキャップ 誕生から引退までの軌跡を追う」(共著)がある。

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