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story 未来に語り継ぎたい名馬物語

    TTにはできなかった
    グリーングラスだけの偉業

    1978年天皇賞(春)●優勝:ライバル2頭が去った後も、現役続行。岡部幸雄騎手を背に2周目3コーナーで先頭に立って押し切った©JRA

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     京都競馬場でテンポイントが非業のアクシデントに見舞われた同じ日、グリーングラスは東京競馬場のアメリカジョッキークラブカップに出走、クビ差の2着。

     その後、脚部不安で休養。幸い天皇賞(春)を前に体調は回復し、1番人気に応え、菊花賞以来、2つ目の戴冠。TTはいなくなっても3頭の時代は継承されている。そんな思いも込めて淀の競馬場に詰めかけたファンはグリーングラスに惜しみない拍手を送った。が、この頃から慢性的な脚部不安が彼を苦しめることになる。

     ファン投票1位で選出された宝塚記念はエリモジョージの2着に惜敗すると、歯車は徐々に軋んでいった。半年に及ぶ長い休養。1年前、TTと歴史に残る名勝負を繰り広げた有馬記念には何とか出走することはできたが、一時代を担ってきた彼にとっては屈辱的な3番人気の評価で、着順も6着と不本意な成績で終わった。

     これで引退か。そう思ったファンも多かったが、新しい年も現役を続行。潔さよりもTTと競い合ってきた誇りを貫き通す。そんな決断だったような気がする。

     ここから有馬記念まで、彼は懸命に復活を目指した。が、わずか3戦。2着、3着、2着と善戦はしたが勝ち星を重ねることはできなかった。そして最後のレースとなった有馬記念。ファン投票2位。人気も2番と、6歳という年齢、さらに、ここまでの歩みを考えれば妥当な評価を下され、レースを迎えた。

     スタートして好位につけ、4コーナー手前で早めのスパート。全盛時を彷彿させる走りでゴールを目指した。直線、後方からサクラショウリなど若き実力馬が迫り、ここまでかと思われた瞬間、二の足を使い、猛追するライバルたちをハナ差で凌ぎ、TTもできなかった有終の美を飾った。

     2頭に先着したのは菊花賞だけだった。ライバルは去り、1頭になっても限界まで走り続けた。そして、ラストランで偉大な彼らと肩を並べることができたグリーングラス。

     引退式で場内に流された名曲「思い出のグリーングラス」。いまでもこの曲を聴くと、あの時代が甦ってくる。

    1979年有馬記念●優勝:1年半以上、勝利がなく迎えたラストラン。年少のダービー馬や天皇賞馬たちを力でねじ伏せ、現役生活の掉尾を飾った©JRA

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    グリーングラス GREEN GRASS

    1973年4月5日生 牡 黒鹿毛

    インターメゾ
    ダーリングヒメ(父ニンバス)
    馬主
    半沢吉四郎氏
    調教師
    中野吉太郎(中山)→中野隆良(中山→美浦)
    生産牧場
    諏訪牧場
    通算成績
    26戦8勝
    総収得賞金
    3億2845万1400円
    主な勝ち鞍
    79有馬記念/78天皇賞(春)/76菊花賞/77日本経済賞/77アメリカJCC
    JRA賞受賞歴
    79優駿賞年度代表馬、優駿賞最優秀5歳以上牡馬

    2020年1月号

    広見 直樹 NAOKI HIROMI

    1952年生まれ、東京都出身。早稲田大学を中退後、雑誌編集者、記者を経てフリーのライターとなる。著書に「風の伝説 ターフを駆け抜けた栄光と死」、「日本官僚史!」「傑作ノンフィクション集 競馬人」(共著)など。

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