競馬場レースイメージ
競馬場イメージ
出走馬の様子
馬の横顔イメージ

story 未来に語り継ぎたい名馬物語

    世界の名手をうならせた
    ジャパンCの圧勝劇

    2014年 ジャパンカップ ● 優勝 菊花賞後は3戦未勝利。スミヨン騎手と新コンビを結成し、行く気に任せて直線では後続を寄せ付けなかった。その後は2戦し、ターフを去った©H.Watanabe

    すべての写真を見る(8枚)

     4歳を迎えたエピファネイアは、芝2000㍍の中距離路線を進むこととなった。気性面は成長があるはずだし、ある程度ペースの速いこの距離は、いかにも合いそうだった。

     だがエピファネイアは、そんな人間の思惑通りにいく馬ではなかった。

     大阪杯はキズナの3着。香港のクイーンエリザベスⅡ世Cは、地元のデザインズオンロームの4着。

     いずれも鞍上の制御は利き、掛かったわけでもなかったが、直線では闘志を発揮することなく伸びを欠いた。特別な敗因は見当たらなかった。

     折り合い重視の調教に傾きすぎていた春の反省を踏まえて臨んだ天皇賞(秋)も、気合は戻っていたが、それが空回りする形でスムーズなレースができず押し上げて6着まで。

     そんな2000㍍路線を終えて迎えたのが、ジャパンCだった。

     この14年ジャパンCは、戦前から近年最高のメンバーと騒がれていた。

     3連覇を目指すジェンティルドンナ。凱旋門賞帰りのハープスターとジャスタウェイ。皐月賞馬イスラボニータ、ダービー馬ワンアンドオンリーの3歳牡馬2騎。外国馬もバーデン大賞やバイエルン大賞勝ちのドイツ馬アイヴァンホウ、愛ダービー馬トレーディングレザーなどがいた。

     福永騎手がジャスタウェイに乗るため、替わって鞍上に配されたスミヨン騎手に、角居調教師はレース前「引っ掛かります」とだけ伝えたという。しかしこの日のエピファネイアは、そんな言葉では済まなかった。

     レース後、スミヨン騎手は3番手から抜け出して突き放し、良馬場のジャパンC史上最大の4馬身差で圧勝した走りを興奮気味に振り返った。

     パドックからテンションが高かったけど、跨ってからも変わらなくて、馬場入りの際には落とされるかと思った。6、7番手でと言われていたが、すぐにそれは無理だと思った。コーナーごとに抑えようとしたけど、それもままならなかった。このまま2400㍍はもたないので、直線に入ったら100㍍くらい抑えようと思っていたら、そこからレースが再スタートしたみたいに一気に伸びた。

     そしてこう付け加えて笑った。

    「オルフェーヴルみたいに急に止まるんじゃないかと思ったけど、大丈夫でした」

     結果的に、エピファネイアの勝利はこれが最後となった。

     この次走、やはり福永騎手がジャスタウェイに乗るため、今度は川田将雅騎手で有馬記念に臨んだエピファネイアは5着でレースを終える。

     明けて5歳春はドバイワールドCへ。スミヨン騎手が「押しても進んでいかなかった。ダートが合わなかった」と振り返ったように、初めてのダートで砂をかぶって戦意喪失、9頭立ての最下位となった。

     そして帰国後、宝塚記念を目指していたエピファネイアは、レース2週前の追い切り後に左前脚の繋靱帯炎を発症、7月末に引退が決まった。

     通算成績は14戦6勝、GI勝ちは2つ。そんな数字からはわからないかもしれないけれど、関わった者の言葉が、目撃した者の直感が、こう伝えてくる。もしかしたら、この馬こそが最強馬なのかも、と。エピファネイアとは、そういう馬だった。

     いや、残っている数字もある。

     IFHA(国際競馬統括機関連盟)発表の14年ロンジンワールドベストレースホースランキングで、エピファネイアはドバイターフを圧勝したジャスタウェイの130ポンドに次ぐ129ポンドで、同年世界2位の評価を得た。この数字は、21年秋現在の今もなお、国内の芝2400㍍における歴代最高値だ。

    ©Y.Hamano

    すべての写真を見る(8枚)

    エピファネイア EPIPHANEIA

    2010年2月11日生 牡 鹿毛

    シンボリクリスエス
    シーザリオ(父スペシャルウィーク)
    馬主
    (有)キャロットファーム
    調教師
    角居勝彦(栗東)
    生産牧場
    ノーザンファーム
    通算成績
    14戦6勝(うち海外2戦0勝)
    総収得賞金
    6億9858万2400円(うち海外1078万7400円)
    主な勝ち鞍
    14ジャパンC(GI)/13菊花賞(GI)/13神戸新聞杯(GⅡ)/12ラジオNIKKEI杯2歳S(GⅢ)
    JRA賞受賞歴

    2021年11月号掲載

    軍土門隼夫 HAYAO GUNDOMON

    1968年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学を中退後、「週刊ファミ通」編集部、「サラブレ」編集部を経てフリーのライターとなる。現在、「優駿」「Number」などの雑誌やweb媒体などで執筆。著書に「衝撃の彼方 ディープインパクト」がある。

    04
    04