競馬場レースイメージ
競馬場イメージ
出走馬の様子
馬の横顔イメージ

story 未来に語り継ぎたい名馬物語

    勝ち切れないレースが多くとも
    ファンが抱き続けた思い

     アスリートにとって強力なライバルの存在は幸運なのか、不幸なのか。名馬の戦いを振り返る時、そうした思いにしばしば駆られる。トップロードについてもまったく同じである。

     明けて4歳となった2000年には、7戦して一つも勝てなかった。そのうちの実に6戦での勝ち馬がオペラオーだった。同馬はこの年、重賞8連勝、GI5連勝の偉業を達成する。一方では脚部不安のため、菊花賞を最後にベガは引退した。つまり三強は、古馬になって明暗を分けた。オペラオーが強大な敵として立ちはだかる中、12月の有馬記念では、トップロードの手綱はとうとう的場均に渡された。

     その後も紆余曲折は続いていく。

     01年の5歳シーズン、阪神大賞典をレコードで制したものの、天皇賞(春)ではまたもオペラオーに敗れた。秋の京都大賞典では落馬に遭遇し、一時は現役続行が危ぶまれたほどだった。だが、その後迎えたジャパンCの、ジャングルポケット、オペラオーに続く3着で健在ぶりを示した。そして、オペラオーが引退した翌02年には重賞を3勝した。

     ただ、そのラストシーズンにおいても、天皇賞(春)は3着、天皇賞(秋)は2着、ジャパンCは10着と、二度目のGI制覇には手が届かなかった。渡辺の怪我により秋3戦の手綱は四位洋文が取ったが、有馬記念でラストランを迎えた時、渡辺とのコンビが復活した。そしてファンは、この人馬に、今一度の声援と温かい拍手を送ったのである。

     優勝したのは3歳馬シンボリクリスエスだが、ファン投票の1位に選出されたのはトップロードだった。結果は4着ながら、渡辺を背に、最後の直線で懸命に末脚を伸ばそうとする姿は、デビューの頃から少しも変わらなかった。

     愛すべきひたむきさ。

     弟子を優しく見つめ、実父のごとく成長を願い続けた調教師の姿勢によるものか、馬を信じ、共に勝たんと懸命の模索を続けた騎手の姿勢によるものか、全30戦の走りから私たちは多くの感動をもらい受けた。チーム・トップロードの人馬には共通して、愛すべきひたむきさが備わっていたと思えてならない。だからだろう、勝ち切れないレースが多かったにもかかわらず、「トップロードは好きじゃない」と話すファンに、私はこれまで会ったためしがない。
             (文中敬称略)

    ©T.Kaga

    すべての写真を見る(8枚)

    ナリタトップロード NARITA TOP ROAD

    1996年4月4日生 牡 栗毛

    サッカーボーイ
    フローラルマジック(父Affirmed)
    馬主
    山路秀則氏
    調教師
    沖芳夫(栗東)
    生産牧場
    佐々木牧場
    通算成績
    30戦8勝
    総収得賞金
    9億9011万2000円
    主な勝ち鞍
    99菊花賞(GI)/02京都大賞典(GⅡ)/02・01阪神大賞典(GⅡ)/02京都記念(GⅡ)/99弥生賞(GⅡ)/99きさらぎ賞(GⅢ)
    JRA賞受賞歴

    2021年5月号掲載

    河村 清明 KIYOAKI KAWAMURA

    1962年生まれ、山口県出身。北海道大学文学部国文科専攻を卒業後、㈱リクルートを経て、ライターとして活動を始めた1996年には「優駿エッセイ賞」を受賞した。著書に「馬産地ビジネス」、「馬産地放浪記」、「ウオッカの背中」などのほか、競馬漫画「ウイニング・チケット」の原作・原案協力がある。

    04
    04